乙川優三郎

2010年10月31日 (日)

「露の玉垣 乙川優三郎 著」

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史実を短篇にしたという。

8編のどれもが、この著者に掛かると名作になる。
それがしが登城した近辺の話であり、その風景を思い描きながら読んだ。

中でも、
・「新しい命」は、身につまされ、

・「きのうの玉蔭」は、武士らしい繊細な優しさを見せられ、


・「晩秋」では、それがしに老後を指南され、


・「静かな川」では、これぞ武士!を考えさせられた。

地味な内容ではあるが、小藩の武士の「サムライ魂」を見せられ、考えさせられる内容である。


新潮社文庫 514
平成227月1日発行 初版

■内容:
度重なる水害や飢饉に喘ぐ越後新発田藩。若き家老・溝口半兵衛は財政難に立ち向かう一方で、二百年に及ぶ家臣の記録を書きはじめる。後に世臣譜と題される列伝は細緻を極めて、故人の人間像にまで及ぶ。そこにあるのは身分を越えた貧苦との闘いであり、武家の葛藤であり、女たちの悲哀であり、希望である。すべて実在した人物を通して武家社会の実像を描く、全八編の連作歴史小説集。 BOOK」データベースより

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2010年1月 1日 (金)

「さざなみ情話 乙川優三郎 著」

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乙川さんの作品はどれも安心して浸っていられるものばかりです。

今回の作品も長編でしっかり浸れました。

何といっても、

最後に希望が持てるのは嬉い限りです。

辛いことばかりの「ちせ」の人生ですから、

是非幸せを摑んで貰いたいと願うばかりです。

新潮文庫 514
平成21101日発行

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2009年8月30日 (日)

「再・喜知次 乙川優三郎著」

Photo講談社文庫 \667

実は、こういうことは初めてである。

読み終えた本を、そのまま即その日のうちの読み直し始めた。

それだけこの本に心を打たれたのである。


きっかけはこうだ。

読み終えた後、しばし余韻に浸っていた。浸らずにはいられない結末であったからだ。
その後、巻末の縄田一男さんの解説へ流れていった。


「私と同じ感想だ。」
更にそこには
「2度目の方が更に深く心を動かされて驚くばかりであった」と記されていた。

これを読んだ瞬間
「そうだ、この結末を理解しながら、もう一度読んでみよう」と、考えたのだ。

そして、再読
言葉の裏に隠された細部の表現に感動し、重みを感じた。

そして、初回よりはやはり二度目のほうが感動するのである。
ふとした喜知次の言葉が、実に重いのである。

そして図らずも、通勤の電車で泣いてweepしまうのである。

やー、素晴らしい本です。

そして面白いことに、今や激動の中にいるそれがしには、気にならなかった部分が非常に重い言葉として突き刺さってくるのであった。

P148

「異を唱えるのはたやすい、それが正しいことも多い、しかし現実に眼を向けたとき物事には為すべき順序というものがある」

今のそれがしには、この言葉の意とすることがよく理解出来まする。

しかしこの著者、本当に凄いなー。
まだまだ若いのによくこういう言葉を書けるものだぁ。
それがしと何歳も離れていないのに、感心するばかり。

*お前と比べんな!って、確かに、それは言えるcoldsweats01

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2009年8月19日 (水)

「喜知次 乙川優三郎 著」

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講談社文庫 \667

2001年 3月15日  第1刷
2002年11月29日 第7刷

     1998年2月 単行本として刊行

「喜知次って何?」から始まり、
魚の名前と知り、そこから義理の妹のあだ名であることも読み進めるうちに解かる。
実に面白い題名である。



さて、前にも触れたが、この著者:乙川優三郎さんの作品にハズレは無い。
今回もまったく同様。

最初の話の展開&登場人物等々は、藤沢周平さんの映画にもなった「蝉しぐれ」に似ている。が、それも中盤まで。ここから後半にかけては良い展開で安堵させながら「Happy end」で終わらせないのが著者らしい。

読者としては、「ほっ」とさせてもらって、気分よく本を閉じたいのだが・・・・。

「最後、こういう展開に話を持っていくか?????」と、感心させられる。さすがです!good

最後は実に悲しいweepのだが、その一方で、
最後のページを終え「じっと黙って、しばしその世界に浸り重みを噛み締めたいthink」そんな作品であった。

実に満足の一冊。

読み始めたら止まらずdashdanger、一気に読み終えた。未読の方はどうぞ覚悟のほどを!


私はこの中でも、
下士の息子で終始汚名を着せられながら、最後「50石二人扶持」を捨ててまで意地を通した猪平の生き方にひどく感動した。
p367「身なりは粗末でも堂々と歩いていたに違いない。」

この短い文章が胸に突き刺さるweeppunch

「侍」なるものは、こうでなければならない!!

しかもこの猪平、最後はそれがしの故郷に表向きは向かっている。
p351「越後か・・・・・。ずっと雪深いところだな」
「おばさんの祖母にあたる人が高田の生まれだそうで・・・」

■内容(「BOOK」データベースより)
裕福な武家の嫡男・小太郎に愛らしい義妹ができた。一見、平穏な日々だったが、藩内には権力を巡る派閥闘争の暗雲が渦巻き、幼なじみの父親が暗殺されてしまう。少年ながらも武士として藩政改革に目覚めた小太郎の成長に、友が心に秘める敵討ちと義妹へのほのかな恋心を絡めて、清冽に描く傑作時代小説。

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2009年4月30日 (木)

「冬の標(しるべ)」 乙川優三郎

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文春文庫 619
2005
1210日第1
単行本200212月 中央公論新社刊

一気に読みました。
悲しかったーweep

男でも自由に生きられない幕末の時代、小藩の武家の娘が南画家(水墨・淡彩で山水を描く)に成るべく我を通すが思い適うはずもなく、20年後、全てを捨て一人江戸へ。

今の世の片田舎にも通じる雁字搦めの生活、
したくもない結婚、出産、夫との死別、忍ぶ恋愛、家に縛られ義夫を看取り、義母との長い長い確執、などなど。そんな縛られた生活のかなでも絵を描くことを辞めなかった執念。
幼き頃、南画を志す身分の違う少年、少女3人が成長していく過程、幕末の世に翻弄されながら各々違う道へと流れていく。いずれも哀れで、読みながら一生懸命少年、少女を応援しちゃいました。

20年後3人が再会し書画会を開くが、そこの出品する絵一枚一枚を文章から想像しましたが、是非どんなものか見てみたい気がしました。勤皇派急先鋒の光岡修理の「逆の葱」は、想像しただけでも笑っちゃいますが是非見たかったですね・・・。

世の「仕来(しきた)り」&時代との葛藤物語。

いずれの世も生き難いものでござる。

■内容:

幕末、小藩の大番頭の娘・明世は南画の自由な世界に魅せられるが、世間の仕来りは女子が絵を描くことを許さない。結婚して夫と姑に仕えることを強いられた二十年を経て、明世はついに自らの情熱を追う決心をする
 封建の世に真の自立の道を歩もうとする一人の女性の、凄まじい葛藤と成長を描いた感動長編。(「BOOK」データベースより)

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2009年4月18日 (土)

「蔓の端々」 乙川優三郎

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ツルノハシバシ

講談社文庫 667円

2003/ 4/14 1刷発行
20004月 講談社より単行本として刊行

超お薦め本!

言葉の一つ一つが重く、泣いてしまいますweep
映画になっても全くおかしくない内容、実に深い。



更に、一度読んだら止まらない! subwayNon stop暴走列車!
「どうして居なくなった? それでどうなった? 今はどうしている?」
この答えを探そうとどんどんページを捲ってしまう。
早く知りたい、早く読みたい、早く電車で没頭したい、このまま乗り続けていたい、降りたくない、macで読み続けていたい・・・。

いやー、睡眠や仕事どころじゃない!!実に危ない本wobbly シドニー・シェルダンに勝るとも劣らない。

でも、最終的にはこの著者独特の世界
「人とは?」に行き着くconfident
実に考えさせられる本です。十分すぎるくらい満足した本でした。

*この本の一番のポイントはここでしょう。
P376

人はどう生きようと最後には後悔するように出来ているのかも知れん、しかし生きている間は明日を見て暮すほうがいい、不幸や憎しみを忘れるのはむつかしいが、忘れなければ立ち淀むばかりだろう」
「しかし、よしんば忘れたとしても再び思い出さぬとは限りません」
「そういうこともあるだろ、だが一度忘れておけば次は軽くなる」


*この言葉が読み進めていく中で非常に重い言葉となっていく。

また、こういうのはどうじゃ?

P362

人は食わずには生きられない、着るものもいれば家もいる。そして、そのために働き続けて死んでしまう。まったく生きるために食っているのか食うために生きているのか分からん。貧乏人は生まれたときから食うために生き、最後は食わせるために死ぬんだ」「不幸なんぞ腹の足しにもならん」

*この箇所は悲し過ぎました。


■内容:
若き武士・瓜生禎蔵(うりゅうていぞう)は、剣術で身を立てようと武芸に励んできた。ある日突然、彼が妻にと想いを寄せていた娘・八重が、幼馴染みで道場仲間の黒崎礼助(くろさきれいすけ)と姿を消してしまう。しかも礼助には筆頭家老暗殺の嫌疑が。事の真相は?
藩内抗争に否応なく巻きこまれてゆく武士たちの苦悩と悲哀を描く傑作時代小説。

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2009年3月13日 (金)

「椿 山」 乙川優三郎

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文春文庫 ¥448
2001
1110日第1
2005
625日第9

道理すら曲げてしまう「身分」というものの不条理を知る、下級武士の子。

生きることの切なさを清冽な筆で描ききる表題作など含む全4編。

■「ゆすらうめ」:
6
年の年季を終え再び色茶屋に戻らぬように心を砕く番頭。しかし、家の為に堅気の世界からまた戻ってきてしまったおたか。喜んだのも束の間、真に美しいおたかに涙・・
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■「白い月」:
賭博好きのぐうたら亭主と別れることの出来ないおとよの愛憎。
どこかで読んだことがあり様な内容だった。

■「花の顔」:
老人介護問題は、今も昔も大変です。

■「椿 山」:
さすがに表題作、力のある作品でした。
下級武士の子として理不尽を味わい、出世に賭ける覚悟をした青年。家族にも心を閉ざし、孤独に生き、手段を選ばず藩政の中枢にまで登り詰める。が、最後思い切り泣かせてくれる。
「何と申されました?」 この言葉には、涙・涙・涙・・・

子供のころの無二の親友、その百姓の親友に憧れの女性を奪い取られ絶縁していた。が、最後は二人の為に死を覚悟で剣を抜く。

これは良い小説です

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2008年10月19日 (日)

「夜の小紋」 乙川優三郎

Photo講談社文庫 448円
2007年9月14日第1刷
2000年9月 講談社刊行「芥火」の改題

表題作含める全5篇。
中でもやはり「夜の小紋」がずば抜けている。男の女々しさが非常に良い。共感します。

■「芥火」:
   
“女の強さ、たくましさ”という以外に言いようがない。

       ■ 「夜の小紋」:
「男の未練と女の強さ」とでも言おうか・・・。今も昔も男はだらしがない。そうは言いながら、解からぬではないが・・

        「虚舟」:
老後はこうありたいものです。

        「柴の家」:
武士と陶芸家。地位と名誉を捨てても自我を貫き通す勇気を貴方は持っているか?

        「妖花」:
なんら不安のない生活でも簡単に家庭は壊れるもの。

*お薦め度:★★★☆☆(気軽に読めます)

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2008年9月14日 (日)

「かずら野」 乙川優三郎

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新潮社文庫 514円
平成18年10月1日発行
平成13年8月 幻冬舎より刊行

長編時代小説

やはり、「長編もの」は読んでいて落ち着く。

まず題名。「“かずら野”って、何?」と思ったが、文中「葛=つる草の総称」と解かる。

「人の運命」は一寸先が闇であるが、ここまで不幸を背負った主人公(少女)には、どうしても幸せになって欲しと望まずにはいられない。

決して本人のせいではないが、もって生まれた悲運。それでも彼女を長年待っていてくれている長屋時代の幼馴染、転居先々の人々の優しさが沁みる。
読みながら、「甲斐性無しの男にここまで尽くさなくとも・・?」、「早く三行半を突きつけろ!」と応援するも、なかなか踏ん切りのつかなさに最後までイライラさせられる。

しかし、最後の最後、こういう結果になろうとは・・・・・。

つくづく「情とは?」を考えさせられる。
各転地先の地元の人々、内職先の主人、息子。何れもいい人達に恵まれるも次々に駄目男が無にしてしまう。しかし、その男も人間ではあった。


■ストーリー:
足軽の娘が貧困の為14歳で奉公に出される。が、実は大店の妾として売られたのだ。それを知らずに生活していた娘は当初その待遇のよさに戸惑うが、後にその事実を知る。しかし、とある事に巻き込まれ、大店の父を殺した若旦那がその娘を道連れした。それから仮の夫婦として土地を転々とするが、一度狂った運命には逆らえず人の恩を全て仇で返してきた。流浪の果ては銚子へ流れ着く。さてその後の運命は・・・

■お薦め度:★★★★☆


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2008年9月 8日 (月)

「屋烏(おくう)」 乙川優三郎

Photo講談社文庫 495
2002/2/15
1
2002/7/26
3
1999/2
月 講談社より単行本刊行

本の題名がいまいちピンと来ないので難ではあるが、著者の数ある著書の中でも抜群の出来栄えではないだろうか? 収録全5篇共、読み終わった後の爽快感、満足感、幸せ感は非常に心地良い。読んで幸せな気分になる超お薦め時代小説!

■「禿松(かぶろまつ)」:
揺れる男心になんともハラハラさせられる。しかし、妻は逞し。

祝言まであと二月と迫っていた。しかし、それまで待てない若侍。許婚に手をつけた現場を親とその上役に見られ二人の人生が狂いだす。その後、上士に嫁いだ元・許婚と、婚期を逃した現妻を娶った主人公。


     「屋烏(おくう)」:
表題作。そうかー、よかったなー、よかったよかった。やっと幸せを見つけたね。苦労は報われないと!

 父が政変に巻き込まれ惨殺されて以来、一家の大黒柱となり幼い弟を育て上げた姉。気がつけば、婚期はとうに過ぎ、妻を迎えた弟一家の為に家を出るしかなくなってしまった。武家の宿命を背負った姉の一生とは何だったのか?。しかし、別の宿命を背負った侍が現れ・・・・・。


     「竹の春」:
これはまさに、藤沢周平さんの世界です。思った通り、十分納得!
しかし、なんとも人間の醜さよ

 脱藩した侍に娘を道連れされた一家の主人。その一歳違いの兄から部屋住みで毎畑仕事を強いられている弟に命令が下された、「娘を連れ戻し侍を始末しろ」。

武家において、1つ違いの兄弟の処遇差と葛藤。そして、現世にも通じる「卑しい人間」が描かれる。

■「病葉(わくらば)」:
これは辛い。しかし、最後は心温まる。愛情とは、何たるものぞ?

 息子と歳が変わらない器量良しの娘を後妻にした奉行の父。その継母に切腹を迫る息子。母と呼べる日は・・・


■「穴惑い(あなまどい)」:
何だろう?何だろう? このまますんなり終わるはずはないよナーと思って、明けてみれば、「そうか、そう来たか、やられたー」感服! しかし、これは凄い内容だ。
 
父の敵討ちの為34年も帰らなかった主人が突如帰ってきた。苦労を全身から漂わせる妻、藩も本家当主に成り代わった叔父も戸惑う。さて、本懐を成就しても厄介者でしかない侍。なんとも、すんなりその地位を継承、復活させられぬ、人間の醜さよ

■お薦め度:★★★★★(超満足!)

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